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「木々との対話」展

東京都美術館で開催中の「木々との対話」展を見に行ってきました。

これは都美館の開館90周年記念展ということで、正に超豪華ラインナップ。

中でも私は土屋仁応さんの作品が非常に好きなので、それを知っている友人らから「これは絶対に見るべし」とレコメンドが続々寄せられたので行ってきました大阪から。今回は半分この展示を見るために上京したようなものです。

新作から個人蔵の旧作まで、これだけ大型の土屋作品が集まっているのは初めて見ました。展示室に入った瞬間、昨年メグミオギタギャラリーで見た「竜」が展示されているのが目に入り、なぜか涙があふれてしまいました。

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初めて見たときから私はこの竜に惹きつけられてたまらないのです。

本当に、ただただ綺麗。

なにか懺悔したいような、心を見透かされているような気持ちになってしまう。

今の田中福男さん作のガラスの玉眼を入れるようになる前の作品では水晶の目を使っていたと思いますが、私は土屋さんの作品は水晶のようだと思っています。水晶はすべてを浄化する力があるとされ、古代から魔よけや神事に使われてきた石です。現代でも「置いた場所を浄化し、エネルギーを調和する」という力があるパワーストーンとして信じられています。土屋さんが作り出す優しい目をした生き物たちは、こちらに向けて強いメッセージを放っているわけではありません。ただ目前に立った者のすべてを受け入れてくれるような感覚。作品を見ていて「赦される」と思うことが他にあるでしょうか。これは彫仏がルーツの土屋さんならではかもしれません。

私が土屋さんのことを知った頃にはもう閉館していた「ギャラリーイヴ」で発行されていた「イヴ叢書第十篇  月の光」という本があります。これは星新一さんのショートショート「月の光」に土屋仁応さんの彫刻の写真を合わせた画文集なのですが、この世にこんなにもぴったりと合う作品同士があるのかと、展示会場でサンプルとして出されていた本書を読みながら涙が出たのをよく覚えています。私が土屋さんの作品に感じるゆるぎない優しさや純粋すぎる悲しみ、指先に触れるような気がするしっとりとした肌。まちがいなく生きていると思わせるのに、きっと触れるとひんやりしている、あの生き物たち。よく土屋作品のモチーフになっている麒麟は綺麗な空気と水しか口にしないとされていますが、その過剰な清廉さが「月の光」の少女ととてもリンクしていると思いました。

古本に詳しい友人が探し出してくれ、発行から6年くらい経っていた限定1000部のこの本を入手できたときは本当に嬉しかったです。「月の光」そのものは星新一著「ボッコちゃん」に収録されているので読んでみたら分かるかと思います。

そして今回ハッとしてしまったのが現代美術の作品との付き合い方についてです。この大好きな竜の作品キャプションに「個人蔵」とついているのを見た瞬間、ヒュッと喉の奥が閉まるようなショックを受けてしまいました。そりゃもちろん人気作家だしこれだけ素晴らしい作品には買い手がつくに決まっています。百万は下らない値が付いていたでしょう。はじめて見たときも「買う」という選択肢ははじめから頭にはなかった。でも個人蔵ということは、美術館に収められた作品とは違って今後一生お目にかかることがなくても何ら不思議ではないんだ、ということを初めて実感させられました。

もしもこの先土屋さんがタツノオトシゴを作るようなことがあれば札束を握りしめて飛んで行こうと深く心に刻んだのでした。タツノオトシゴ、雰囲気に合ってると思うんですけどどうですか……オスが子供産んで神秘的ですよ……?絶対お金ためるから作って欲しい……。

なのでこの展示を見た感想の結論は「稼ぐぞ!」ということです。がんばって働くぞ〜!

土屋さんの展示室に長居してしまったけどもちろん他の作品もしっかり堪能してきました。資料室にあった須田さんの作品(本棚の奥に隠れているツユクサ)を覗き込んだ後、となりにいたおばあさまに「あれは……猫ちゃんかしら?」と聞かれて「!?!? ツユクサ…だそうですよ!」と答えて逃げた。

なぜあれが猫ちゃんに見えるんだ。

しかも都美館のキャンペーンでポスターが当たりました。届いたのが応募締め切りの二日後くらいだったんですけど!仕事早い。

この展示でひとつだけしっくりこなかったのが英文フォントなんですけど……なんでそのチョイスなんだ〜!!!和文とぜんぜん雰囲気あってないぞ!!!ポップすぎるでしょうが〜〜〜!

という叫びを結びの言葉に代えさせていただきます。

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賃貸なので怯えてすぐ剥がした

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